5年目を迎えた「ニッケ ピュアハート イラスト大賞」は応募総数3,770点、たくさんのご応募ありがとうございました。今回もさまざまなピュアな心と出会えました。身近な友人や家族とのふれあい、動物との語らい、未来の自分…。とくに目立ったのが自然を大切にする心や自然と人の関わりなど、自然や環境をテーマにした作品でした。

私たちの棲むこの美しい星をこわさずに大切にしよう、人間も地球の一部なんだからという気持ちの表れかもしれません。ピュアな心は、パーソナルなものからパブリックなのもへと大きく広がっていると感じます。

大賞の奥園さんの作品は、大きな樹からあふれ出るようにいろんな形の葉を精密に描写、自然の生命力や生きる喜びをカラフルな色彩で表現しています。優秀賞の5人もモチーフは違っても、人のやさしさや自然のやさしさをていねいに描いています。描いている今の自分が一番ピュアな気持ちでいると感じさせるすばらしい作品です。

佳作の10名は優秀賞とほとんど優劣つけがたい作品でした。ピュアなハートはまだまだたくさん、あなたの隣で見つけてほしいと待っているかもしれません。

シェークスピアの作品には、しばしば道化師が登場し、芝居の進行やちょっとした風刺やら、ストーリーを盛り上げる重要な役を演じます。そこでは、道化師は喜びも悲しみも楽しみも苦しみも、すべての事象を飲み込んだ人生の水先案内人として登場します。

今回大賞に選ばれた新村さんの絵は、ハートをしっかり抱きしめた道化師のアップ。「ハートを抱く」というアイデアとしては直接的な表現に、審査の評価が分かれるところですが、今の時代、楽しいことだけでなく喜怒哀楽をしっかり受けとめ、素直に自分の気持ちを誰かに伝える、そんなストレートなメッセージも大事ではないか、という点が評価されました。優秀賞のMioさん、柏木さんの2作品と最後まで競い合った結果です。

4回目を迎えた「ニッケ ピュアハート イラスト大賞」は応募総数4,600点、前回より約600点も多いさまざまなピュアハートがそろいました。今回の印象は、きれいに美しくまとめられた作品が多かったのですが、表現が平均化してハッと驚く作品が少なかったことがちょっと残念でした。自分なりの、自分だけのピュアハート。まだまだどこかに隠れていると思います。今度はあなたがそれを見つけてください。

ネット社会と言われる時代。現実と仮想空間の境界がだんだん曖昧になっていく中で、悲しみや喜び、やさしさなども記号化され、本当の意味での「ピュアな心」が見えにくくなってきています。手で触れあい目や耳で語りあう人間生来の感情表現を、もっと大切にしていきたい…「ニッケ Pure Heart イラスト大賞」の目的のひとつは、そんな「生きた心」の交感にあります。
第3回の応募総数は3985点、それぞれ一人ひとりの喜び・やさしさが活き活きと描かれたすばらしい「3985個のピュアな心」に出会えて、やっぱり人間っていいな、と、うれしくなってきました。

大賞の瀬戸さんの作品は、鳥の羽根に包まれたビル＝人間社会を表現することで、人間も自然の一部なんだ、動物や植物と共生する気持ちがピュアな心なんだと訴えます。美しいだけでなく、その中に地球的なメッセージを込めたすばらしい作品です。優秀賞の岩本さんと刀根さんの作品も大賞と同じ視点で表現しています。指の先から伸びるいろいろな造形物で人と自然の関係を象徴したり、大きな花の樹で自然を愛する心を表現したり。同じく優秀賞の斉藤さん、竹内さん、杉山さんは、人間のやさしさや純粋さ素朴さをストレートに描くことで、理屈抜きでピュアな心が伝わってきます。

佳作の10名は優秀賞とほとんど同列、テーマ性などわずかのポイントの差でした。入選の84名を含めた今回の上位100作品は、色彩の美しさが特に印象的で、その中でピュアな思いを際立たせた完成度の高い作品でした。応募総数の内訳は女性が85％と圧倒的。そして小・中学生以下が42％という割合。幼児から80歳代の年齢幅で審査すると、小・中学生以下はどんなに頑張って描いていても、どうしても不利になってしまいます。実際に優れた作品がたくさんあることを考えれば、審査の方法もこれからの課題かもしれません。

もし「おまえの望みをひとつだけ叶えてやろう」と言われたら、アナタは何を望むだろうか。
そういえば昔話に、触ったモノがすべて金になる手がほしいと望んだ男がいて、触るとたちまち金になり有頂天になった。ある時、おいしそうなパンを見て食べたくなり、思わず手に取った瞬間、パンは金になってしまった…。
ニッケPURE HEARTイラスト大賞の審査をしながら、そんな昔話が頭に浮かんできた。その男が「ピュアなハート」と答えていたら、彼の人生はどうなっていただろうか。

「ピュア」という言葉は、とてもビジュアル化しにくいテーマですが、3400点の応募作品は、実にさまざまなピュアハートを見せてくれました。家族への愛、友情、大切なメモリー…などなど、どれも美しく、ていねいに描かれていて、審査員の心をホッとなごませてくれました。

その中で、愛や平和といった絵の題材のピュアさよりも、描いている人自身のピュアさが伝わってくるイラストに、強く引きつけられました。たとえば今回の受賞作で言えば、中村由起子さんの「夜道のドキドキワクワク感」とか、田島大輔さんの「夕焼け」といった自分の生活の身近な題材を、そこだけクローズアップして描くことで成功しています。
大賞の中村さんは、夜というミラクルな心の情景をファンタスティックに表現しているし、優秀賞の田島さんの夕焼け風景は、絵はむしろ素朴なんだけど、うしろ姿の男の子からどんどんエネルギーがわき出すようで、イキイキと心の躍動が伝わってきます。

そんな、アナタ自身の心の中にある、小さくても、たったひとつでも、大切に思う気持ち…それを大きくふくらませて描いてみると、思いがけず素敵なイラストになるかもしれません。次回応募のご参考に。