PROJECT.03

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ウールの価値を広め
繊維事業を強化

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天然繊維のウールは、合成繊維にはない数々の優れた特徴を有している。学生服市場にそれを正しく伝えるべく、ニッケグループが近年取り組み始めたのが「ウールラボ」だ。主力事業の発展をにらんだ、堅実かつ広範な影響力を秘める活動が着々と進められている。

N.S.

N.S.

衣料繊維事業本部 販売促進部
2008年入社

キャリア採用で入社し、人財戦略室にて社員教育の体系化や教育プログラムの企画・運営を担当。その後衣料繊維事業本部へ異動し、ウールおよびニッケの価値訴求活動を開始。

K.T.

K.T.

衣料繊維事業本部 販売促進部
工学部 卒 / 1985年入社

入社後、工場で生産技術を習得。以降、技術研究所や技術開発部で商品開発を長く手掛けた。2019年に現部署に異動となり、ウールラボに参画。

K.A.

K.A.

衣料繊維事業本部
ユニフォーム部 スクール第1課
商学部 卒 / 2020年入社

入社後、現在の部署へ配属となり営業担当に。近畿や北陸エリアで営業活動を行いながら、2022年よりウールラボのメンバーとして各学校での講師役を担っている。

T.T.

T.T.

衣料繊維事業本部
ユニフォーム部 スクール第1課
経営学部 卒 / 2022年入社

入社後、現在の部署へ配属され、近畿エリアの制服用生地販売を担当しつつウールラボに参画。現在はその講師認定を目指して勉強中。

STORY.01

ウールの良さを伝え
需要喚起の一手を模索

ウールは120年以上前の創業からニッケが衣料繊維事業で活用してきた基本素材だ。現在ニッケが国内シェアNO.1を誇る学生服生地にもウールが多く使用されている。だが、近年はポリエステルなどの安価な合成繊維が勢いを増しており、ニッケとしては将来の脅威と認識している。繊維の素材メーカーであるニッケの主要営業先が学生服のデザインや縫製を行うアパレル企業で、エンドユーザーである学校や学生との距離が遠く、そのニーズをつかみにくいことが課題となっていた。

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販売促進部に所属するN.S.は、同部への異動直後からこの状況の打開策を考え続けていた。ニッケでは販促活動の一環として学生服の意義や着こなし方を指導する出前授業を教育機関へ無償で提供していたが、その内容はウール自体のアピール力に欠け、ニッケの独自性を打ち出す点で弱いようにも感じていた。そんな中で目にしたのが、ニッケの大規模展示会で行われていた実験コーナー。同コーナーでは様々な実験を通して機能性に優れたウールの特徴を紹介し、参加者の注目をひと際集めていた。

「そのときの様子を見た瞬間に“これだ”と。学校や学生にも実験を交えてウールの特徴をダイレクトに楽しく伝えられると、制服素材として積極的に求めてもらえるのでは、とひらめいたのです。また、ほとんどの人が知らない正しいウールの知識を伝えることで、学校が行う衣生活をテーマとした教育をサポートできるとも思いました」と振り返るN.S.。

早速、N.S.は実験コーナーで進行役を務めウールに関する豊富な技術的知見を有していたK.T.に協力を仰ぎ、ウールを紹介するプログラムづくりに着手。翌年に二人三脚で新しい出前授業「ウールラボ」を立ち上げ、中学校・高校を中心に全国の学校へウールの価値を訴求してゆく活動を開始した。

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STORY.02

画期的なプログラムを
軸に活動が進展

ここで一旦、ウールの主な特徴について紹介しておこう。まず、ウールは保温性・吸湿性に優れ、冬は暖かく夏は涼しい着心地を可能にする。燃えにくく安全で水をはじく性質もあり、一度染めれば色落ちしにくくシワや汚れが付きにくい。さらに天然繊維であるため生分解性に富んでおり、石油由来のポリエステルと違って自然に還りやすく地球環境にも優しい。綿やポリエステルに比べて値は張るが、入学から卒業までの間、毎日着用しても上質感が続くので、学生服にはまさにうってつけの素材なのである。

N.S.とK.T.はこうしたウールの特徴を複数の実験で証明しアピールする約50分間の体験型プログラムを完成させると、営業部門と連携し合って学校訪問に奔走した。当初コロナ禍の影響で受け入れ校が伸び悩んだが、その間に受講者の反応や評価を精査し、SDGsへの効果を絡めるなどプログラム内容の改善を積み重ねた。

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そうして学校からの開催依頼が次第に増え始めると同時に、自分たち同様にウールラボを推進できるプロジェクトメンバーの育成に注力。社員にノウハウを伝授しつつ出前授業のプレゼンスキルを磨く、講師の社内認定制度をスタートさせた。そこに手を挙げ、新たにウールラボに参画したのが営業担当のK.A.とT.T.である。ともに若手ながら幅広い学生服販売エリアを任され、それぞれ営業活動を送っていた中でウールラボの可能性を察知し、自ら講師となる意欲が芽生えたのだ。

「自分の担当エリアにある学校へのアプローチで二人の手伝いをしていたので、ウールラボを実際に見て非常に面白い活動だと思っていました。大勢の生徒の前で話すなど経験したことがなかったですし、それができれば自分のスキルアップに大きく役立つと考えて参加しました。今は講師認定を受けて授業を行っており、これを続けることで学校や学生とのつながりを深め、具体的な営業成果に結び付けられそうな感覚もあります。実際に先輩社員で実績を出した方もいるので、かなり前向きに取り組んでいます」と目を輝かせて話すK.A.。一方、T.T.は入社2年目でプロジェクトに参加したフレッシュな感想を次のように語る。

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「私はまだ先輩方に同行してウールラボの実験などをサポートしている段階。講師に認定されるまでもう少しかかりそうですが、営業担当として“モノ”を売るだけでなく、“コト”の提案と実行に携われるウールラボにとても魅力を感じています。このような仕事ができるのはニッケならではだと思うので、できるだけ早く講師になって自ら授業を手掛け、学生の笑顔とウール製品へのより高い支持を引き出したいです」

STORY.03

ユーザーの確かな
支持獲得を目指して

コロナ禍後に本格稼働となったウールラボは、取材時点まででトータル実施回数が約160回、実施校数は約100校に上った。ウールラボに携わる社内のメンバーもN.S.・K.T.のほか大阪・東京・岐阜を拠点に10名を超え、文部科学省の学習指導要綱に準拠したわかりやすい授業プログラムが多くの学校の賛同を得て活動の輪が着実に広がっているという。今夏には某自治体の全中学校の家庭科教諭へ向けてウールラボを開催することが決定しており、各先生を通じてさらにウールの価値が社会へ広く浸透してゆく様相を見せている。しかし、そんな中でN.S.は「これからが本当の勝負」と自らを戒めることを忘れていない。

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「ウールラボを単なるメセナ活動で終わらせるのではなく、ニッケのウールを利用した学生服のシェアをこれまで以上に高めることが本質です。ゆえに今後はウールラボをいかに営業活動の枠の中に効果的に組み込めるか、どれだけ学校や学生のニッケに対する認知度を拡大できるかが課題。学校が制服を変えようというときに、学生服を作るアパレルメーカーへ“生地はニッケで”と当たり前のように言っていただけるまで、精一杯ウールラボを進展させていきたいと考えています」

決意を込めてそう話すN.S.を見つめながら、取材に同席したK.T.、K.A.、T.T.の3名がしっかりと首を縦に振った。

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ウールラボ他、ニッケが取り組んでいる教育支援プログラムの詳細はこちら